日本国憲法を紐解くまでもなく、日本国内で生きている以上、その全員に納税義務があります。
ただし、「全ての国民に納税義務があること」と「全ての国民に課税できること」とは全く別の話になります。
何が言いたいかというと、ホームレスからは物理的に税金を徴収することが出来ないんじゃないかと疑問に思う人も多いと思うんですよね。
だって、家がないので固定資産税は徴収しようがないし、住民税にしたって公園や河原で生活しているホームレスにどうやって課税したらいいのかよくわかりません。
もしホームレスが全ての税金から逃れられるのであれば、薄給にもかかわらず死ぬ気で納税の義務を果たしている日本国民からすれば、不公平だと思う人もきっと多いと思います。
実際、ホームレスになりさえすれば、全ての納税の義務から解放されるのでしょうか。
ホームレスからは固定資産税や住民税は徴収しようがない
先述した通り、家がないホームレスからは、「固定資産税」や「住民税」などの税金を徴収しようがありません。
そもそも、「固定資産税」は土地や家屋などの所有にかかる税金なので、不動産を所有していないホームレスは課税対象ではありませんし、個人の所得に対する税金である「住民税」にしても、働いていないホームレスには所得がないため、住民税がかからないため、課税対象外となってしまいます。
ただ、実際にはホームレスであっても、アルミ缶を集めてお金に換えたり、少年誌や週刊誌など雑誌を拾い集めて路面で売ることで1日に5000円近くの収入を得ている人も少なくないのが現実です。
収入を得ているのだから、住民税の納税義務は発生しますし、所得税だって課税対象になってきます。
ですが、定住する住処がないホームレスに対して住所を特定することができない以上、税金を徴収することが物理的に出来ないというのが現状になってしまいます。
ホームレスが納税する税金は消費税ぐらい
ただ例外的にホームレスであっても、間接的に納税しなければならない税金がただ一つだけあります。
それがモノやサービスを「消費」したときにかかる税金である「消費税」ですね。
ホームレスだって、何かを食べないことには生活できませんから、多くのホームレスが雑誌を売って得た日銭で食料品を日常的に購入します。
消費税は、商品を買った瞬間、追加で徴収される間接税ですので、ホームレスもコンビニやスーパーで食料品を購入した時点で消費税を払ったことになるのです。
ただ逆に言うと、ホームレスが納税しているのは消費税位で、それ以外のほとんどの税金については納税していないということになります。
税金を納めてないことを理由に避難所などの公共施設の利用を制限できるか
2019年10月12日に地球最大規模と言われる台風19号が日本を襲いました。
10月16日現在、NHKの報道によると「74人死亡 11人不明 224人けが 55河川で決壊 全容は不明」とのこと。
東日本を中心に甚大な被害が出ています。
そんな中、「台東区の避難所が住所不定の男性2人に対し、受け入れを拒否した」というニュースが話題になっています。
住所不定の男性とは俗に言うホームレスの男性のことです。
なんでも、このホームレスの男性が避難所に到着した際、職員に住所と名前を書くよう求められたので「住所がない」と伝えたところ「区民対象(この避難所は)です」と受け入れを断られたとのこと。
また男性が「北海道に住所がある」と説明したところ「都民のための避難所です」と再度断られたとのこと。
結局このホームレスの男性は、一晩中建物の外でビニール傘を広げて過ごしたのだそうです。
この台東区の対応に、賛否両論沸き上がって炎上するという事態が起きました。
全ての人の命は大事!が基本
どのような意見があるのか。賛否両論の声を拾うのにTWITTERのキーワード検索機能は大変便利です。
ユーザーのリアルタイムのつぶやき(意見)が聞けるからです。
一通り見ましたが、だいたい次のような賛否の声に集約されていました。
●台東区の対応に否定的な声
- 人の命を差別している
- 避難した被災者全員を公平に受け入れるべき
- ホームレスは死んでもいいということなのか
●台東区の対応にやむなしの声
- ホームレスは税金を払ってないのだから区民が優先されるべき
- 不衛生で悪臭がする人と同じ空間で長時間一緒にいるのは現実的ではない
- 短気で攻撃的なホームレスの近くにいるのが怖い
後に安倍総理が国会の場で「避難所は、災害発生後に被災者の生命身体などを保護するために、被災者が一時的に生活を送るために、設置されたものであり、各避難所では避難したすべての被災者を適切に受け入れることが望ましい。関係自治体に事実関係を確認し、適切に対応していく」と述べてますが、私自身もこの意見に極めて近い感想を持ちました。
避難所では全ての人を受け入れるべきです。
そして、感情論だけでなく、公平に受け入れるだけでは衛生面などの問題も当然出てくるので、それは「適切な対策を常日頃シミュレーションしておき、災害時に慌てずその通りに対処する」というスタンスが大事になってくると思っています。
「ホームレスは税金を納めてないから、公共サービスを受ける権利は一切ない」というのは極端な考え方であって、差別を生むものだということを考えてほしいですね。