みなさんは、「タワマン節税」という言葉をご存知でしょうか。
誰もがお金は大事なので、税金は少しでも少ない方がありがたいですよね。
そして法律によって認められている税金の節約法が「節税」ということになり、手法の一つに、この「タワマン節税」といわれるものがあります。
一般的に20階建て以上の高層マンションのことタワーマンションを言いますが、タワマン節税とは、相続税を少なくする目的で、都心部などのタワーマンションを購入する節税対策のことです。
このタワマン節税に対して、2016年現在、税務当局の厳しいチェックの目が向けられるようになっているわけですが、まずはタワマンを購入するとなぜ相続税の節税が期待できるのかについて書いてみたいと思います。
タワーマンションの高層階は「相続税評価額」が低い
マンションの相続税を決める際に、手始めに土地と建物に分けて相続税価額を算出することになります。
まず土地分の相続税価額については、マンション敷地をマンションの戸数で分けることで算出されます。
少ない敷地に対して、タワーマンションは低層マンションと比べ総戸数が多いため、一戸当たりの負担分は比較的小さくなりますね。
そして、建物分の相続税価額ですが、算出するのに路線価を基準にしていることから、広さで同じであれば「下の階」でも「上の階」でも評価額が同じになるのです。
ポイントは、売買価格上、他が同じ条件であれば「高層階」の方が「下層階」よりも高く評価されるのに、相続税価額は「高層階」も「下層階」も変わらないという点です。
つまり、現状「タワマンの高層階を購入し、自分の子供に相続させる」だけで「同じマンションの下層階を購入し、自分の子供に相続させる」よりも、相続税支払い後に残る資産を多くすることが出来、これを「法人化」や「差益を狙ったタワマン転売」などのスキームと組み合わせることで、節税効果を期待できるというわけです。
こうして、富裕層を中心にこのタワマン節税が注目されるようになったのですが、このような方法が今後も活用され続けてしまえば、「タワマン節税」が金儲けの道具に悪用されかねないため、当然税務当局からの監視の目がタワマン節税に注がれるようになり、否認されるケースが増えてきているというわけです。
徴税(納税)の本義は所得の再分配にあり
タワマン節税に限らず、「過度な節税」に対するチェックの目が厳しくなってきている理由としては、徴税の目的が「所得の再分配」にあるからにほかなりません。
資本主義経済のもと生きていく以上、貧富の格差はどうしても出てきてしまいます。
その格差を是正するために、多く持っているところからは税金を多く徴収し、所得の少ないところに分配することが必要になり、その役割を徴税がになっているというわけです。
そのため、富裕層が節税スキームを使ってさらに富んでいくことを良しとしないのは、こうした節税の趣旨を考えれば当然の流れといえるでしょう。
このことが、過度な節税を否認する動きにつながり、追徴課税など罰則強化、法改正による抜け穴の遮断へと続いていくことになります。
「節税」と「租税回避行為」と「脱税」の違いとは?
みんなお金をたくさん持っていたいです。
当サイトでも「マンションを高く売る方法」について詳しく解説していますが、どうせ売るなら少しでも高く売れてほしいと皆が思うのもごく自然な感情だといえるでしょう。
そして、同じように誰だってお金を多く取られたくないのですよね。
そのために節税すること自体に問題はありません。
法律で認められている物に関しては、節税することで税金を少なくすることはできます。
ですが、法律のグレーゾーンを狙った節税対策は「租税回避行為」とみなされ、税務調査の際否認されるケースが多々あります。
グレーゾーンとはいえ、脱法行為ではないので、脱税ではないのですが、法律の死角を突いた、悪質な「節税対策」とみなされてしまうのです。
「租税回避行為」といえど、法律に違反しているわけではない以上、見逃されるケースもありますが、税務当局から否認されることも覚悟しておく必要があるということです。
「租税回避行為」と判断されれば、否認され追徴課税食らうリスクを覚悟する必要がある
そして、税務申告を否認されてしまえば、過去数年にさかのぼり、加算税が課される可能性があります。
一般的に、税務調査によって、追加で税金を納める必要があると判断されたケースでは、
- 過少申告加算税
- 無申告加算税
- 重加算税
- 延滞税
などが必要に応じて加算され、それぞれ所定の加算税率が加算されるため、納付期間が遅くなれば遅くなるほど、納める税金額も増えていきます。
そのため、グレーゾーンと言われている「租税回避行為」を行うのであれば、否認されたときのリスクをよく考え、専門家のアドバイスを参考に自己責任でやっていくしかないでしょう。
その節税がグレーゾーンである以上、税務調査で否認される可能性はあり、国税局に追徴課税されるリスクがあるということを覚えておきましょう。
政府の「高層マンションにかかる固定資産税見直し」から判断すべきこと
ここまでタワマン節税についてみてきましたが、こう考えてみると、平成29年度税制改正で、政府・与党が「高層マンションにかかる固定資産税」の見直しを行うのかが理解できると思います。
現在は床面積が同じであればどの階層でも同じ税額だが、実際の取引価格を踏まえて高層階ほど税負担を高く、低層階では低くなるよう調整する。
20階建て以上の物件を対象に、高層階になるほど固定資産税の税額が高くなるよう見直す。高層階は増税、低層階には減税にして、1棟当たりの税額の総額は変わらないようにする。税額の傾斜配分の手法は今後詰める。
節税のグレーゾーン、アービトラージに関しては、最終的に法改正によって無くしていくという流れですね。
つまり、タワマン節税が少しずつ否認されるようになった背景には、「所得の再分配」という納税の根本理念が侵される行為が多く見られるようになったため、税務署が本腰を入れてグレーゾーンへの踏み込みを加速させていると捉えることができ、今般の「高層マンションにかかる固定資産税見直し」によって、「タワマン節税」を無くしていくという流れになっていくのではないかと考えています。